ヒールフリップ(Heelflip)歴代の使い手たち|開放感と美学が生んだスタイルの系譜

キックフリップとヒールフリップ。同じ「フリップ」でも、好きな方を聞けばそのスケーターの個性が見えてくると言われる。

ヒールフリップはボードをかかと側に蹴り出して縦にフリップさせるトリック。キックフリップよりもボードの軌道が身体から外側に流れるため、視覚的にダイナミックに見える。そしてなぜか、ヒールフリップを得意とするスケーターはほぼ例外なく「スタイルがいい」と言われる傾向がある。

マイク・キャロルの余裕たっぷりなヒールフリップ、ジェリー・スーのラインに溶け込んだヒールフリップ、バスティアン・サラバンジのただただ速いヒールフリップ——このトリックは美学の見本市だ。

🛹 ヒールフリップの誕生——もうひとつのマレン発明

ヒールフリップもロドニー・マレンが発明したトリックだ。キックフリップとほぼ同時期の1980年代初頭に開発され、「フロントフットヒールフリップ」として体系化された。前足のかかとでデッキを蹴り出すという動作はキックフリップと鏡写しの関係にあるが、ボードが身体から外側に逃げていく軌道は全く異なる感覚を生む。

ストリートスケートへの普及はキックフリップより少し遅かったが、1990年代中盤から独自のスタイルを持つスケーターがヒールフリップを武器として磨き始め、「どちらが好きか」という永遠の議論がスケーターの間に根付いた。

📌 キックフリップとの違い
キックフリップ:前足のつま先でデッキを内側から蹴り出す。ボードが身体に寄ってくる軌道。
ヒールフリップ:前足のかかとでデッキを外側に蹴り出す。ボードが身体から遠ざかる軌道。この「開いていく」感覚がヒールフリップ独自の視覚的ダイナミズムを作り出す。

⚡ 時代を作った使い手たち

Mike Carroll(マイク・キャロル)|ヒールフリップの象徴

「ヒールフリップといえばマイク・キャロル」——これはスケート界でほぼ共通認識だ。Chocolateの共同創設者でもあるキャロルのヒールフリップは、力が抜けているように見えて完璧に安定している。1990年代から2000年代にかけての映像では、複雑なラインの途中に自然にヒールフリップが挟まれ、まるで歩いているかのように見える。『Round Three』(Almost / 2004)や『Chocolate Tour』での映像は特に有名だ。

▶ YouTube で見る:Mike Carroll – Heelflip Highlights


Jerry Hsu(ジェリー・スー)|ラインの中の宝石

Emerica所属、台湾系アメリカ人スケーター。Emerica『This Is Skateboarding』(2003)でのジェリー・スーのパートは、ヒールフリップの美しさを語るうえで必ず名前が挙がる映像だ。彼のヒールフリップはボードの回転がクリアで、キャッチが早く、着地が一切ぶれない。しかもそれをラインの中の一要素として組み込む——単発の技として見せるのではなく「流れの中の一瞬」として機能させるスタイルは、今の世代のスケーターにも影響を与えている。

▶ YouTube で見る:Jerry Hsu – This Is Skateboarding (2003)


Bastien Salabanzi(バスティアン・サラバンジ)|フランスが生んだ天才の速さ

フランス出身のバスティアン・サラバンジは、10代でスケート界を席巻したプロジー(神童)だ。Flipの映像で見せたヒールフリップは、信じられないほど速い。ボードがスピンし終わる前に乗っているのではないかと錯覚するほどのタイミングで着地する。その後スケートから離れる時期もあったが、登場した時のインパクトはシーンに刻まれている。

▶ YouTube で見る:Bastien Salabanzi – Flip Heelflip


Chad Muska(チャド・マスカ)|ビッグスタンスのパワーヒールフリップ

1990年代後半のストリートスケートシーンで一世を風靡したチャド・マスカ。DJとしても活動する彼のスケートはパワーとポップが際立つ。Emerica『This Is Skateboarding』やShady Shermanのパートで見られるヒールフリップは、広いスタンスから繰り出されるビッグポップが印象的だ。キャリア全体を通じてヒールフリップは彼のシグネチャートリックのひとつとして認知されている。

▶ YouTube で見る:Chad Muska – Heelflip


Ishod Wair(イシャド・ウェア)|現代に受け継がれるヒールフリップの美学

Nike SBとReal Skateboardsのイシャド・ウェアは、ヒールフリップとキックフリップを同等のクオリティで持つ数少ないスケーターのひとりだ。2013年Thrasher「スケーター・オブ・ザ・イヤー」受賞。彼のヒールフリップはマイク・キャロルの系譜——力が抜けているように見えるのに、ボードが完璧に足の下に戻ってくる。Nike SBの映像を通じてこのスタイルが現在に引き継がれている。

▶ YouTube で見る:Ishod Wair – Heelflip Highlights


Nick Tucker(ニック・タッカー)|スタイルと高さの融合

Nike SBのニック・タッカーはヒールフリップの高さと伸びで知られる。特に縁石やレールを使った映像でのヒールフリップは、ボードが足の下で浮いているかのように見える瞬間がある。まだキャリアの途上にあるが、ヒールフリップの次世代を担うスケーターとして評価されている。

▶ YouTube で見る:Nick Tucker – Heelflip

📋 ヒールフリップ進化の年表

年 出来事 スケーター
1983〜 フロントフットヒールフリップとして発明 Rodney Mullen
1990年代 ストリートでの「象徴的スタイル」確立 Mike Carroll
1990年代後半 パワーポップスタイルで人気 Chad Muska
2003 ラインの美学を極める(This Is Skateboarding) Jerry Hsu
2000年代 神童として超高速ヒールフリップを披露 Bastien Salabanzi
2013〜 現代への継承(Thrasher SOTY 2013) Ishod Wair

✅ スポットギークス的まとめ

「キックフリップとヒールフリップ、どっちが好き?」はスケーターへの最高の雑談ネタだ。好みが分かれる理由はシンプルで、見た目も感覚もまったく異なるからだ。ヒールフリップが開いていく軌道には、キックフリップにはない開放感がある。

マイク・キャロルの系譜はジェリー・スーを経てイシャド・ウェアへと確かに受け継がれている。ボードが足の下で浮かんでいるかのように見えるあの感覚——それがヒールフリップの本質だ。

まず見るべき映像 3選

  • 🥇 Mike Carroll – Chocolate(1990s):ヒールフリップスタイルの原点
  • 🥇 Jerry Hsu – This Is Skateboarding(2003):ラインに組み込まれた宝石
  • 🥇 Bastien Salabanzi – Flip(2000s):これ以上速くなれないというスピード
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WRITER
スニッカー北村

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