2003年の「Warcraft III: The Frozen Throne」以来、23年ぶりの新キャンペーンが何の前触れもなく降ってきた。BlizzCon 2026のオープニングセレモニーでシャドウドロップされた「Warcraft III Reforged: Forsaken Kingdom」だ。
結論から言う。配信日は2026年9月12日、PC(Battle.net)向けに配信済み。価格は単体29.99ドルで、遊ぶには「Warcraft III: Reforged」本体が必要だ。ボリュームは約30時間のソロキャンペーンで、アーサスによるローダロン王国の崩壊から、シルヴァナス率いる「フォーセイクン」誕生までの空白期間を丸ごと描き切る。
正直、このニュースを最初に見たとき目を疑った。2020年のReforged発売時のあの惨状を覚えている身としては、「まだこのタイトルに新規コンテンツを作る気力が残っていたのか」というのが率直な感想だ。しかも中身は、WoWプレイヤーが20年間ずっと「誰か映像で見せてくれ」と言い続けてきたあの4年間である。
だが手放しで喜べるかというと、そこは別の話だ。本稿では配信情報・価格・収録内容を整理したうえで、気になる点にも踏み込んでいく。
「Forsaken Kingdom」はいつ配信?いくらで遊べるのか
2026年9月12日に配信開始済みで、価格は単体29.99ドル。ただしプレイには「Warcraft III: Reforged」本体が必須だ。
BlizzCon 2026の開幕と同時に発表され、そのまま即日配信という完全な奇襲だった。事前のティザーもリークもほぼ無く、発表から数時間後にはもう遊べる状態になっていた。Blizzardがこの規模のコンテンツでシャドウドロップを選ぶのは珍しい。
購入形態は3種類に分かれている。すでにReforgedを持っているなら単体版、本体ごと買うならコンボ版、限定コレクションまで手を出すならForever Collectionという構成だ。
| エディション | 価格 | 内容 |
|---|---|---|
| Forsaken Kingdom(単体) | 29.99ドル | キャンペーンのみ。Reforged本体が別途必要 |
| Forsaken Kingdom Combo | 49.99ドル | Reforged本体+Forsaken Kingdom |
| Warcraft Forever Collection | 79.99ドル | 上記+WoW「Forever Skyborne」エピックパック等。2027年1月11日までの期間限定 |
なお日本円での正確な販売価格は、本稿執筆時点(2026年9月)でBattle.netショップの日本リージョン表示を確認できていないため断定を避ける。ドル建ての価格を基準に、購入前に必ず自分のアカウントのショップ画面で最終金額を確認してほしい。
言語面については朗報がある。インタフェースとテキストは日本語化されているため、30時間ぶんの物語を英語と格闘しながら読む必要はない。……英語のままだったらSteam Deckに入れて池袋の喫茶店でちまちま翻訳する羽目になっていた。危なかった。
Warcraft IIIとWoWの間の「4年間」で何が起きたのか?
アーサスによるローダロン王国の崩壊から、シルヴァナスがフォーセイクンを旗揚げしアンダーシティを築くまでの4年間が舞台だ。
ここがこのDLC最大の売りだと断言していい。「Warcraft III」のラストと「World of Warcraft」のスタート地点の間には、ゲームとして描かれていない大きな空白がある。小説や設定資料で断片的に補完されてはいたが、プレイアブルなキャンペーンとして通しで体験できたことは一度も無かった。
収録構成は2部構成になっている。
- プロローグ「The Last Days of Lordaeron(ローダロン最後の日々)」 — スカージの侵攻によって王国が滅びゆく最後の日々を描く
- 本編「Forsaken Kingdom」(全3章) — アンダーシティの建設と、スカーレット・クルセイダーをはじめとする敵対勢力との抗争を描く
約30時間という尺は、往年のWarcraft IIIの1キャンペーンとしてはかなり重量級だ。しかも今作はセミオープンワールド形式を採用しており、探索・アイテム管理・ヒーローのタレント育成といったRPG要素が大幅に拡張されている。純粋なミッションクリア型RTSではなく、「RTSの皮をかぶったアクションRPG寄りの何か」に近い設計思想と言っていいだろう。
シルヴァナス・ウィンドランナーというキャラクターは、WoW本編で散々な扱われ方をした末に評価が真っ二つに割れている。その彼女が「まだ何者でもなかった」時期を描くというのは、シリーズのファンにとって相当に意味が重い。推しの原点を20年越しで見せられる感覚、わかる人にはわかるはずだ。
主人公ガレック・バンダリオンは何者なのか?
ローダロン市警備隊の中尉であり、物語の途中でアンデッドの戦士へと転じる新規キャラクターだ。
既存の有名キャラを主役に据えず、あえて無名の一兵卒から書き起こしたのは正解だと思う。アーサスもシルヴァナスも歴史上の「結末」が確定しているキャラであり、彼らを操作しても物語の行き先に驚きは生まれない。だが名も無き警備隊員が国の滅亡に巻き込まれ、死してなおフォーセイクンとして立ち上がるまでを追体験させるなら話は別だ。
さらに今作では、これまで背景のモブ同然だったダークレンジャー・アーニャやレオニード・バーサロミューが主要キャラクターに格上げされている。WoWで「あれ誰だっけ」程度の認識だった顔に、ようやく人格と過去が与えられるわけだ。
この「脇役に物語を与える」アプローチは、2.5次元舞台が原作の隙間を埋めるオリジナルエピソードを作るときの手法とよく似ている。元オタクショップ店員としては、こういう供給のされ方に滅法弱い。
Patch 3.0の「Definitive Edition」は無料なのか?
無料だ。Reforgedへのアクセス権を持っていれば、追加費用なしでDefinitive Editionのグラフィックスモードが利用できる。
Blizzardの公式告知でも、この点は明確に線引きされている。
The Definitive Edition update brings performance and graphical improvements to new and returning players at no additional cost for those who already have access to Warcraft III: Reforged.
引用元:Blizzard News
つまり「キャンペーンは有料だが、ゲーム本体の品質改善は既存プレイヤー全員にタダで配る」という構図だ。2020年にReforgedを買って泣きを見た層への、6年越しの詫び石という見方もできる。実際、Patch 3.0で入った変更はDLCを買わない人間にとっても無視できない規模になっている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Definitive Edition | 新グラフィックスモード。従来のClassic HDを置き換える。追加費用なし |
| ユニット同時選択数 | 12体から24体へ拡張 |
| 新ヒーロー | 中立タバーンヒーロー「Forsaken Paladin」。対戦モードへの新ヒーロー追加は20年ぶり |
| World Editor | ツール群を強化 |
| Reforgedモード | 地形(テレイン)を再追加 |
| Warcraft III: Classic | 独立したクライアントとして別途提供 |
特に「ユニット同時選択数12→24」は地味に見えて競技シーンに直撃する変更だ。12体制限はWarcraft IIIの操作感を規定してきた根幹のルールであり、これを倍にするというのは20年以上続いた戦術の前提を書き換える行為に等しい。歓迎する声と、原典が壊れると嘆く声の両方が出るのは避けられないだろう。
Warcraft III: Classicが独立クライアントとして切り出されたのも重要だ。「昔のままの見た目と挙動で遊びたい」層に逃げ道が用意された形になる。
気になる点はどこか?Reforged騒動の記憶は消えていない
最大の懸念は、このタイトルが背負っている前科だ。
Warcraft III: Reforgedは2020年1月28日に発売されたが、その直後の評価は壊滅的だった。グラフィックの異常、マルチプレイが機能しない、プレイ中のクラッシュ多発と、そもそもゲームとしてまともに動かないという報告がフォーラムに殺到し、Blizzardは最終的に自動返金対応にまで追い込まれている。カスタムゲームの権利問題など、コミュニティとの信頼関係を損なう要素もいくつも重なった。
その後6年をかけてアップデートが積まれ、Patch 3.0で大幅な改修が入ったのは事実だ。だが「発売直後の品質が担保されるか」については、過去の経緯がある以上、慎重に構える読者がいて当然だと思う。配信直後に飛びつくか、数週間ぶんのユーザー報告を待つか。ここは判断が分かれる。
加えて、日本円での正確な価格が確認しづらい点も引っかかる。Battle.netのリージョン設定によって表示金額が変わる仕様のため、ドル建て29.99ドルという数字だけを見て決済すると想定と違う請求になる可能性がある。購入ボタンを押す前に必ず金額表示を目視で確認してほしい。
一方で評価すべき点も多い。30時間という尺に対して単体29.99ドルという価格設定は、時間単価で見れば十分に安い。Definitive Editionを無料開放した判断も、既存ユーザーを切り捨てなかったという意味で誠実だ。何より、商業的に「終わった」と見なされていたタイトルに23年ぶりの新規キャンペーンを作ったという事実そのものに価値がある。
推しは二次元でいい、というのが基本スタンスのわたしだが、死んだと思っていたIPが息を吹き返す瞬間だけは何度見ても燃える。
Forsaken Kingdomは買うべきか?結論と重要情報の再掲
WoWの世界観に少しでも思い入れがあるなら買っていい。23年ぶりに供給された「あの4年間」は、それだけで29.99ドルぶんの価値がある。
最後に判断材料を整理しておく。
- 配信日:2026年9月12日(BlizzCon 2026でシャドウドロップ、PC/Battle.net)
- 価格:単体29.99ドル/本体同梱コンボ49.99ドル/Warcraft Forever Collection 79.99ドル(2027年1月11日までの期間限定)
- 前提条件:プレイには「Warcraft III: Reforged」本体が必須
- ボリューム:約30時間。プロローグ「The Last Days of Lordaeron」+本編全3章
- 主人公:ガレック・バンダリオン(ローダロン市警備隊の中尉→アンデッドの戦士)
- 無料要素:Patch 3.0のDefinitive Editionグラフィックスモード、ユニット選択24体化、新ヒーロー「Forsaken Paladin」
- 言語:インタフェース・テキストは日本語対応
逆に、RTSそのものに思い入れが無く、WoWの歴史にも興味が無いなら急ぐ必要はない。Definitive Editionは無料で降ってくるのだから、まずはそちらで挙動を確かめてからキャンペーンを買っても遅くはないはずだ。
スポットギークス編集部の評価は「条件付きで強く推奨」だ。23年ぶりの新キャンペーンという事実、約30時間という尺、そして単体29.99ドルという価格設定。この3つが噛み合っている時点で、Warcraftの歴史に興味がある層にとっては買わない理由が薄い。有名キャラではなく無名の警備隊中尉ガレック・バンダリオンを主役に据えた構成も、結末が決まっている時代を描くうえで理にかなった選択と言える。一方で、2020年のReforged発売時に自動返金へ追い込まれた前科は忘れるべきではない。配信直後の飛びつきにはリスクが伴う。
死んだIPが23年越しに立ち上がる瞬間に立ち会える。それだけで元は取れる。
※本記事の価格・配信情報は2026年9月時点のものだ。日本円での販売価格および為替レートは変動するため、購入前にBattle.netショップで最終金額を確認してほしい。
あわせて読みたい
小田のっこ













コメントを残す